2017-10

読書エッセイ 文字の海を泳ぐ ブログ連載 第十九回 文豪

 つばめ綺譚社五周年記念の期間限定、と銘打って始められたこの読書エッセイのブログ連載も、今回を含めて残すところあと二回となった。回が進むごとに、とりとめのなさというか、好き勝手に書いている様子があらわになっておりお恥ずかしい次第だが、もうしばらく、お付き合い願いたい。
 今回は、テーマを「文豪」とした。文豪、と聞いてまず思い浮かぶのはどの名前であろうか。夏目漱石?森鴎外?芥川龍之介?ドストエフスキー?トルストイ?今挙げた五人は、作品を読んだことがあるかどうかはともかくとして、誰もが名前を聞いたことがあるであろう。……そう、作品を読んだことがあるかどうかはともかくとして。
 読書好き、活字中毒を自負している人であっても、文豪と呼ばれる作家の作品をひとつも読んだことがない、という方は多いらしく、私の知人・友人で考えてみても確かに、少なくはない人数がそうである。それを、嘆かわしい、と言ってしまうのはどうにも上から物を言っているようで嫌だが、寂しいことだ、とは思う。
 では、なぜ、読書が好きな人であっても文豪の作品を避けて通るのだろう。理由としてもっとも多く挙げられるだろうと予想されるのは、「難しそうだから」である。何十年も、あるいは百年以上も読み継がれ、売れ続け、名を残している作品なのだから、きっと良いのだろうとは思う、思うけれど、開いてみたときのあの文字の羅列の雰囲気は、いつも読んでいる現代小説やライトノベルとは明らかに違う……、だから尻込みしてしまう……、というようなところだろうか。
 確かに、普段は使わない、それどころか見たこともないような熟語がたくさん使われ、あらすじを読んでもどんなストーリーなのかいまひとつわからず、変な口調や奇抜な恰好で個性を見せるような登場人物はほとんど出てこない、となれば、敬遠したくなる気持ちもわかる。
 だが、難しい熟語や引用部分には必ず注釈がついている(発表当時の古書をわざわざ選べば話は別だが)し、あらすじを読んでわからないということは、それだけでまとめることが不可能な込み入ったストーリーがあるということなのだから全編を読み通せばいいし、変な口調や奇抜な恰好だけが個性だと思っているのならそれはそもそも大間違いだ。
 つまり、文豪の作品を避けて通ろうとする理由は正確には「難しそうだから」ではなく「〝難しそう〟という問題点を乗り越える手順が面倒だから」なのである。わざわざ注釈のページを参照しながら読むのも、すぐには先の見えてこないストーリーを追うのも、確かに億劫ではある。けれど、その手順を面倒がって素晴らしい作品を味わう機会を逃しているのは、非常にもったいないことであると思う。
 と、いうようなことをいくら切々と書いたところで、読む人は読むし、読まない人は読まない。これだけのことを書いておきながら、私も敬愛する漱石の作品をまだ全作品の三分の一程度しか読めていないのであるから、活字中毒の先輩方には笑われてしかるべきである。
 まだまだ読めていないものがたくさんある、というのは情けないことではあるが、これからまだ素晴らしい作品を読むことができる、と思えばそれは喜びでしかない。なんせ、相手は何十年も、あるいは百年以上も読み継がれ、売れ続けてきた名作だ。きっと良いに違いない。

● COMMENT ●

一読がスタートラインな作品群

なんというか、文豪の作品って本を読んでいるっていうより・・・・・・
細かすぎて、だんだん謎な絵画ながめてるような気分に。
物凄い感覚的な意見で申し訳ない。
その中ですと、私は芥川作品かな。
短編メインでスゴク読みやすい。
転から結の繋がりがなめらかで好み。
と、書いたものの・・・・・・
ただ子供向きといわれるものでさえ、きちんと味わえてる自信がない。
なので楽しもうと思うと、再読前提の読書スタイルに切り替える必要があるような、と。
奥深さは折り紙つきなわけですし、再読はしやすい。
個人的には、普段とは違う読み方で楽しめるところが好みなんですが。
マァ、私としては手持ちが尽きてようやく読むって感じデスカネ。

Re: 一読がスタートラインな作品群

芥川、いいですよねえ、私も好きです!
きちんと味わえている自信は、実のところ私にもないです。
それぞれの楽しみ方ができればいいのかな、と折り合いをつけたつもりになりつつも、やはり読み込んで読解したい気持ちもあるので、なかなか厄介な存在ですよね、文豪の作品。
再読が前提、という言い方には納得しました、確かにそういうところある・・・。


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プロフィール

紺堂カヤ(華夜)

Author:紺堂カヤ(華夜)
文筆家。
日々悪戦苦闘、ただしマイペースに。
文学と声をこよなく愛する。
二つ名は「筆舌破天候ガール」
創作サークル「つばめ綺譚社」にて小説を書いています。
また、クラウドゲート㈱のWTRPG「ファナティックブラッド」にてシナリオをリリース中。

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