2017-10

読書エッセイ 文字の海を泳ぐ ブログ連載 第十八回 時と場合

 いつ、どこで、どのようにするのがもっとも読書にふさわしいのか、いまだにわからない。
 この場所でなければ、こういう状況でなければ、読書はできない!というようなこだわりは、ほぼ持ち合わせていない人間である。いつだってどこだって本は読める。だからこそ、いつどこでするのが読書にはもっともよいのか、ということになると、容易には答えを出せない。
 洒落た静かな喫茶店で、美味しいコーヒーを飲みながら、ゆっくりとページをめくる、というのが理想ではある。年に何回か、わざわざそういう場所で読書の時間を取ることもある。だが、「ではそれが読書にもっともふさわしい環境なのか」と訊かれると、いや、それはどうだろう、とも思ってしまう。自宅の南向きの窓の下にできた陽だまりに身をひたして没頭する読書もたまらなく甘美だし、布団にぬくぬくとくるまって本を開くのも幸せだ。私はたまにしかやらないが風呂に持ち込むのも好きだし、遠出する際の新幹線の車内や日々の通勤電車の中でも喜んで読む(ただし車酔いするのでバスは無理)。
 こうして時と場合を並べ立ててゆくと、どうにも「こうするのが一番だ!」と言えなくなってきてしまうのだ。どんな場所でもどんな時でも、持っていればつい開いて読みだしてしまうもの。それが活字中毒にとっての本だ。この、「つい開いて読みだしてしまう」がなかなか困りものだということは、どなたさまも想像に難くないであろう。たとえば、天気の良い休日に、部屋の掃除をしようと決めたとき。大量に本棚に押し込められ、さらには本棚の前に積み上がった本を片付けようとなどしたら!もうおしまい!「つい開く」という行為が牙を剥く。一度読んだ本であるのに、とかそんなことは関係なく、ついつい読みふけってしまい、気が付いたときには掃除など少しも進まぬまま日が暮れている。年末の大掃除のときなどにそれをやらかしてしまったときの、後悔を通り越した絶望感はもう、物凄い。時と場合を考えろ!と自分に怒鳴ってしまいたくなる。けれども、そうした読むべきでない時に読んだ本に限って「物凄く良いものを読んだ!」という気がしてしまったりもするのだ。まったく、活字中毒者とは愚かな生き物である。
 もっと人を呆れさせるのが、朝、出かける前、という百パーセント時間がないというときにすら本を開いてしまうことがある、という、にわかには信じがたい愚行の歴史である。これは主に高校生の頃に多かった。昨夜ギリギリまで読んでいた本を、朝またギリギリに起きているにもかかわらず、布団の上で開いてしまう。結果、自転車を全力疾走させて登校する羽目になり、ギリギリセーフ。ときにはアウト、遅刻決定。まったく、阿呆としか言いようがない。
 このような愚かさを軽減させるためにも、読書をするべき時と場合はある程度決めておいた方が良いのだろう。そうは思いつつも……、私は今日も片付け途中の部屋の中で本を開いてしまう。

● COMMENT ●

わかるのが悔しい

大掃除中に本を箱に詰めようとして、開いてしまったときのトラップ感。
表紙を見て、パラパラとめくっていくと……
結果、進んでない掃除、容赦なく過ぎた時間。
ふぅ、満足……じゃないわー。 
そう読後にツッコんだこと、もう……数えたくない。
私の読書は風呂と乗り物以外なら、どこでもですね。
好みは布団の中ですけど。
個人的にも、時間や場所を決めておいた方がいいっていうのは同感です。
次の行動にすごく、支障が、でますしね。
ページをめくる手がとまりません←

Re: わかるのが悔しい

掃除中のうっかり読書、やっぱりご経験ありますよね~。
毎回毎回、すごく反省するのに治らない。
あれ、どうしたらいいんでしょうね?
時間と場所を決められたらいいですよね。決められた通りに実行できた試しありませんけどね!(笑)


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プロフィール

紺堂カヤ(華夜)

Author:紺堂カヤ(華夜)
文筆家。
日々悪戦苦闘、ただしマイペースに。
文学と声をこよなく愛する。
二つ名は「筆舌破天候ガール」
創作サークル「つばめ綺譚社」にて小説を書いています。
また、クラウドゲート㈱のWTRPG「ファナティックブラッド」にてシナリオをリリース中。

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