2017-05

お恥ずかしながら読んでいませんでした日記②『外科室』

2017年中に読む、と定めた「いつか読もうと思っているが読めていない本」の中の、第二冊目でございます。
前回一冊目として報告をあげたのが、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』という大長編でございましたが、今回は打って変わってごくごく短い短編でございます。
泉鏡花『外科室』。
以下、「今更お前ごときに言われるまでもないことだ」というような感想が書き連なってございます。どうぞご容赦くださいますよう、平にお願い申し上げます。

本当にお恥ずかしながら、わたくし、泉鏡花をきちんと読んだことがございませんでした。
作家の生い立ちや経歴についての知識はありましたし、実に有名な作品ばかりですから、作品のあらすじだけは知っている、というものは多くありました。ですが肝心の作品文章そのものをしっかり読んでおらず、いわゆる「知っているつもり」でいたというわけでございます。
それではいけない、いけないというかもったいない、というわけで、このたび金沢の「泉鏡花記念館」を訪れる予定になっていたこともあり、きちんと読みました。
数ある鏡花の作品の中で、なぜ『高野聖』でもなければ『婦系図』でもなく『外科室』だったのかというと、これはもうごく単純な理由です。あらすじがもっとも、心魅かれるものだったからです。(今後『高野聖』等も読んでいく所存ですが!)
あまりに有名な作品ですので、もはやネタバレも何もないと思ってどんなお話であるかを簡単に書いてしまうと、『外科室』は胸の手術をする伯爵夫人が、手術の際に麻酔をしないでほしい、と言う。理由は、「麻酔で眠っている間にうわ言で秘密を話してしまうかもしれない」から。秘密、それは伯爵夫人の恋心……。
ストーリーという意味で言えば、これでほぼすべてです。なんともあっさりしたあらすじになってしまうのですが、あらすじ以上のものを受け取るにはやはり、本文を読まなければなりません。
そう、あらすじだけを知っている、「知っているつもり」になっていた私に、見事に往復ビンタをかましてくれました。
限界までそぎ落とされたエピソード、選び抜かれた言葉と考え抜かれた文章。それらによってつむぎだされる、濃厚な一瞬の美しさ。
先程、「伯爵夫人の恋心」と書きましたが、本文中にはそんな無粋な表現はしてありません。はっきりと「こうだったのだ」という言葉のないままに進むのに、いかにも強く読者を揺さぶり、苦しくすらさせるのです。
もう、もう、本当に素晴らしくて、感想を書けば書くほど、あまりの伝わらなさに自分の力不足を痛感します……。
今まで読んでいなかったことを恥ずかしく思うと同時に、けれど、たとえば学生時代に読んでいたとして、これだけの感動を覚えることができただろうかというのはいささか疑問ではあります。学生時代の私の読書は、文章や言葉選びよりもストーリーに重点を置きがちだったからです。それを思うと、このタイミングで読むことになったのも単なる「今更」ではないような気もします。
なお、今回私が読んだのは岩波文庫の『外科室・海城発電 他五篇』でございました。そこに収録されていた作品、どれもとても良かったです。『義血侠血』は特に良かった……。
読んでいなかった、ということを恥じつつ、これからも書き連ねていく「お恥ずかしながら読んでいませんでした日記」ですが、このまま、読まぬまま、死んでいくよりは今更でもなんでも読んだほうがいい、と改めて思った次第でございます。

今更でもなんでも、鏡花のほかの作品も、どんどん読んでいこうと思います。

第二回まどろみ読書会 開催報告

毎年のことではございますが、五月に入ると一気に暑くなりますねえ。
この前まで桜が咲いていたはずなのに、というようなことを言うと途端に年寄りくさくなるのでできるだけ差し控えますが、なにはともあれ、五月でございます。
先月末4/30は名古屋コミティアに出店をしておりました。そちらの報告はサークルブログ「Web版つばめ報」に書かせていただきましたのでそちらをご覧いただくこととして、こちらではその前日に開催いたしました、紺堂カヤ主催「第二回まどろみ読書会」の内容をご報告いたします。

DSC_0500.jpg DSC_0499.jpg

今回、参加者はカヤを含めて四名でした。
遠路はるばる駆けつけてくださった方もいらっしゃって、大変恐縮でございました、ありがとうございます。
前回同様、また、あらかじめお知らせしていたように、課題図書等は一切定めず、「おすすめの本」を持ち寄り、本の話をする、という形の読書会でした。本のおすすめをしなければならない、というきまりも作りませんでしたので、本のおすすめをする人もいればひたすら聞いている(でもちゃんとおしゃべりはしてましたよ!)という自由な空気の読書会となりました。
今回紹介していただいた「おすすめ本」は以下の八冊となります。

第二回「まどろみ読書会」オススメ本(順不同)
正岡子規『病牀六尺』
乃南アサ『凍える牙』
辺見庸『もの食う人びと』
いしいしんじ『ぶらんこ乗り』
村田紗耶香『コンビニ人間』
平岩弓枝『花のながれ』
松井今朝子『吉原手引草』
原田マハ『ジヴェルニーの食卓』

ひとつ紹介が上がり話が始まるたび、「それならこの本も」とか「この作家の場合は」とか関連して本の名前が出るわ出るわ。
みなさんたくさんメモを取って行かれたようです。
上記以外の本のタイトルは、参加者だけの特権とさせていただきたく思いますので公開しません。当日配布した冊子「紙の枕」の中身も、参加者さまだけが知り得るものとさせていただきます。
関連本の話ばかりでなく、紹介者がその本を読んだときの心情や個人的偏見という前提のもと繰り広げられる評価とか、面白い話がじゃんじゃん出てきて実に充実しておりました。
話すよりも聞く方が多かった、という方も「面白い話がたくさん聞けて楽しかった」と言ってくださり、読書会に参加した目的はそれぞれ個人で違うものを持ちつつも、全員に楽しんでもらえるものとなりました。
私も本当に楽しかったです。ありがとうございました!

次回は今年の十月を予定しております。
開催が決定となれば第三回となります。調子に乗ってきましたね、カヤが!(笑)
今回来て下さった方も、初めての方も、ぜひお誘い合わせのうえ、ご参加いただけたらと思います。

以下は少し余談になるのですが。
読書会の際、カヤが長年(ここ二年ほど)探している本の話になり。
ネットでなら手に入れられないことはないけれど、なんとなく、書店・古本店で直接手に入れたいので見かけたらご一報を、などと笑ってお願いをして解散になりました。
その後、参加者の何名かと連れ立って入った古書店で。
その本を発見したのです……!
その古書店、すでにこの二年間に何度も足を運び、そのたびに探していたのですが、目当ての本とは出会えず、だったのです。
が。その日に限って、棚に差さっていたというなんとも奇跡のような、巡り合わせを感じさせる邂逅でした。手が震えました。
きっと読書会という縁が引き合わせてくれたのだなあ、と思うと喜びは一層大きなものとなりました。
ありがとうございました。

さあ。皆さまのおすすめの本を読もう。


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プロフィール

紺堂カヤ(華夜)

Author:紺堂カヤ(華夜)
文筆家。
日々悪戦苦闘、ただしマイペースに。
文学と声をこよなく愛する。
二つ名は「筆舌破天候ガール」
創作サークル「つばめ綺譚社」にて小説を書いています。
また、クラウドゲート㈱のWTRPG「ファナティックブラッド」にてシナリオをリリース中。

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