2016-06

紫陽花のころ

 梅雨の時期の生まれだからだろうか、花の中でも紫陽花がことに好きである。
 雨の雫にしっとりと濡れる姿はもちろんだが、雨上がりの光の中で空よりもなおすっきりと咲いているのもいい。
 紫陽花はかなり種類があるそうで、花の色も様々だ。だが、私はやはり紫陽花というと青を思い浮かべる。紫陽花の青を見ていると、「青ざめている」という言葉をいつも思い出す。なぜだかわからない。寂しさや悲しさを吸い上げて、青ざめているようにでも見えるのだろうか。それでいて紫陽花の青は、花びらに触れたらその指が染まってしまいそうに錯覚するほど強く深い青さを持っている。けれど、いっそ染まってしまいたいと思って触れた途端に驚くほどきっぱりとした撥水性を発揮し、青さを分け与えることを気高く拒むのだ。
 紫陽花を愛す者を翻弄する、見事な手管である。
 子供の頃、誕生日プレゼントに紫陽花の鉢植えが欲しい、と両親に頼んだことがある。我が家は誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントに「おもちゃ」を欲しがってはいけない、というルールがあった。子供のプレゼントに「おもちゃ」がなしなんて、と驚く方も多かろうし、実際、当時のお友だちには「えっ、じゃあ何もらうの!?」と心底信じられないという反応をされたものだ。この誕生日プレゼントに関しては、これ以上語ると脱線も甚だしくなるためまたの機会にするとして、つまり、とある年の「おもちゃではないプレゼント」が紫陽花の鉢植えだったのである。
 紫陽花の美しさについて深く考えを持つわけでもなくただ「綺麗だから」という理由(まあ今も根本的にはその一点によるのだろうけれど)で好んでいたわけだが、いざ鉢植えをひとつ受け取ってしまうと、嬉しいはずなのに妙に恐ろしいような気持ちにもなった。そのときには、恐ろしさのようなものの正体をつかむことなどできなかったが、今考えればあれは単なる恐ろしさではなく畏怖だったのだと思う。たとえ自分の鉢植えをもらったとしても決してこの花は「自分のもの」にはならないのだということを本能で察したのだ。

 子どものころから愛してやまぬ、けれどもいつも近寄りがたさも感じている・・・・・・、紫陽花は私にとって身近であり遠い存在でもあるのだ。

 今年は、その紫陽花をことのほかたくさん目にする機会を得ている。
 先日友人と旅行した箱根では、いたるところに咲いていて、登山鉄道は「あじさい電車」として日本一の急勾配を登っていった。

登山鉄道の紫陽花 

 毎朝、自転車で駅へ向かう道にも、それはそれは見事な大輪が鈴なりになっている。去年もここを通っていたはずだが、こんなにも見事に花をつけたのは今年が初めてではなかろうか。

道端の紫陽花 

 忘れてはいけないのは、我が家の紫陽花である。見映えのほどは少々貧相にも思えるが、この慎ましさもまた可愛らしいではないか。

我が家の紫陽花 

 この、決して手に入れられない青さは、それでも、梅雨があけて真夏の空に吸いとられてしまうまでは、私の目と心を愛しさと畏怖の気持ちで揺らしてくれるはずだ。

「あまぶん」にて委託頒布いたします!

梅雨入りした地域が、多くなってきたようでございます。
雨の日が多いとなにかと動きづらくはなりますが、つばめが素晴らしい滑空をみせてくれたり、紫陽花が綺麗に咲いていたり、と、私にとっては嬉しいことも多い季節でございます。

さて。
本日は作品頒布のお知らせでございます。すでに、ツイッターやつばめ綺譚社ブログ「Web版つばめ報」では発表させていただいた内容ですので、重複になるのですが。
つばめ綺譚社にて刊行しております作品の一部を、7月18日(月祝)開催の「尼崎文学だらけ」にて委託出品させていただくこととなりました。頒布するのは、紺堂カヤ『口笛、東風となりて君を寿ぐ』と、紺堂カヤ×伴美砂都『ミーティングは三〇二で』の二作品です!
「あまぶん」の通称で呼ばれる「尼崎文学だらけ」、委託にて作品を出すには「推薦文」が必須(自薦可)という面白い仕組みになっておりまして、『口笛~』の方は伴美砂都に、『ミーティング~』の方は月慈稀羅に推薦文をいただき、出品させていただくことと相成りました!
どちらの推薦文も、非常に気合と熱がこもったものを頂戴いたしまして、本当に有難い限りでございます!
頒布作品の紹介と推薦文は、以下からご覧いただけますので是非とも!
また、この推薦文、どなたでも追加していただけるようです。すでに二作品を読んでくださっている方で「オススメしてやってもいいな」と思われる方がいらっしゃいましたら、追加していただけたらと思います!ごく簡単なものでもまったく問題ないようですので、僭越ながら、よろしくお願い申し上げます・・・!

あまぶん作品紹介ページ↓
『口笛、東風となりて君を寿ぐ』
『ミーティングは三〇二で』

たくさんの方に手に取っていただけたら良いなあ、と思っております。
当日、つばめの者はあまぶんへ参ることができませんが、作品を見かけましたら、どうぞよろしくお願い致します!

NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

プロフィール

紺堂カヤ(華夜)

Author:紺堂カヤ(華夜)
文筆家。
日々悪戦苦闘、ただしマイペースに。
文学と声をこよなく愛する。
二つ名は「筆舌破天候ガール」
創作サークル「つばめ綺譚社」にて小説を書いています。
また、クラウドゲート㈱のWTRPG「ファナティックブラッド」にてシナリオをリリース中。

メールフォーム

文章のお仕事依頼についてはこちらからお願いします。 お名前とご連絡先は必ずご記入ください。 (読書会のお申込みもこちらです)

名前:
メール:
件名:
本文:

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (2)
にちじょー (17)
映画 (4)
つばめ綺譚社 (19)
創作 (11)
舞台 (3)
読書エッセイ『文字の海を泳ぐ』 (21)
お知らせ (6)

リンク

このブログをリンクに追加する